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オンラインで世界中の人に納豆作りも伝授…米在住ナチュラリストがコロナ禍で得た気付きとは

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

世界の食事情を知る情報交換の場としても作用

紅茶キノコクラスでは溜まって行くスコビー(株菌)を使いジャーキーも作成。副産物をすべて使うのもコンセプト【写真:小田島勢子】
紅茶キノコクラスでは溜まって行くスコビー(株菌)を使いジャーキーも作成。副産物をすべて使うのもコンセプト【写真:小田島勢子】

 また、みそのワークショップでは世界中とつながったからこその発見が。みそ作りに重要な「麹」はどこの商品がおすすめか、実際に現地で生活されている方に情報をシェアしていただくことで、各国それぞれの人が納得して安心できる「もの選び」の選択肢が豊富になりました。

「キムチ」の食材である白菜や唐辛子でさえ、国の事情や季節の変化によってキャベツやハラペーニョを使い、「これがなければ作れない」という概念自体が不要であることをみんなで感じました。

 日本の方からは、このワークショップで世界の食事情を実際に海外で生活する方から聞くことができて楽しいとの感想をいただき、レシピを学ぶ以上のワクワクを感じてもらうこともできました。

 今までの視点と違い、ワークショップに参加した人たちが1つのテーマについて良いなと思う食材やお店の情報をシェアしたり、実際に困っていることを質問で投げかけたりして、みんなでクラスを作り上げる。「世界をつなぐコミュニティワークショップ」のスタイルが今も進化しつつあります。

体験を通してそれぞれの価値観を培う そして判断することが幸せ

 こんな風にワークショップのスタイルは大きく変化しつつありますが、私が込める思いは変わることなく、以前よりも一層強く思うことがあります。それは、みんながみそや納豆、漬け物を手作りすることが私の思うゴールではないということ。

 実際に現地で手に入る食材を使い、それぞれの環境で作る。そして材料は何を使い、どんな工程で作られているかを体験する。こうした体験を通して、各々の価値観を見出すことこそがゴールだと思っています。

 実際に材料を集めて自分の手で作ってみることにより、手作りへの愛情を感じる人もいます。また思った以上に材料費が高価、工程が簡単だったと驚く人もいます。

 みそやみりん、しょうゆなど、これらの発酵食品は日本にいれば手軽に手に入ります。けれども、これら一つひとつを作る時にどのくらいの時間や手間がかかっているかを知ることによって、世界の見方が大きく変わると私は思います。

 職人が丹精込めて作る商品(作品)への素晴らしさを改めて感じることもできるでしょう。また、スーパーで何気なく手に取ってみた商品の原材料を見てみたり、価格が安すぎる時の理由を考えてみたり。些細なことにも疑問を向けることで、今までとは違った意識を持つきっかけにもなります。

 その結果、実際にこれからも作っていきたいか、それとも自分が納得できる商品を購入するか、それぞれの価値観で楽しく選択ができたらとても幸せだなと思っています。そして個人個人が大切にする思いやつながりが、共感することができる農家さんや企業さんを見つけ、その応援になることを願っています。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/