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子宮頸がんから復活 美ボディ競技の女王が闘いを経て目指す新ステージとは
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手術後のアジア選手権で2位に 「初めて泣きましたね」
再びジムに通い始めたのは手術から1か月後。下腹部には縦方向に約20センチの傷が残りました。一度切開された腹直筋は元の強さに戻らず、さらに傷口は硬いしこりのようになり、競技を続ける上でのハンデにもなります。
また、トレーニング再開時には、筋力も大きく低下していました。80キロの負荷をかけていたスクワットは、20キロでよろめく始末。それでもアジア選手権という目標だけを見つめ、「どんなトレーニングをどんな密度でやっていたのか全然覚えていないんです」と語るほど、必死の毎日を過ごしました。
長瀬さんのこうした努力が実り、2019年7月に開催されたアジア選手権では、見事2位という好成績を収めます。
「大会で勝っても負けてもまったく泣いたことはなかったんですが、この時は初めて泣きましたね。前年、がんが見つかる前に同大会に出場した時、実は最下位だったんです。そこからの2位だったし、がん治療も挟んでいるし、よく復活したなと思いました。本当に怒濤の1年でしたから」
復活劇から間もなく、世界は新型コロナウイルスの猛威にさらされました。その影響で各大会も延期や中止が相次いでいます。これをきっかけに長瀬さんは目標を見直し、新たに2つ大きな挑戦を決心したそうです。
1つはがんサバイバーであることを公表し、婦人科系の病気や体に残る傷に悩む女子選手のために立ち上がること。
もう1つは40歳以上の選手をメインとした国内イベントを開催することです。そして、その目標を実現させる過程で、ビキニフィットネスの世界マスターズ選手権で必ず優勝すると心に決めました。
同じ病気や体に傷を持つ女性へエール「何かを諦めてほしくない」
まず、がんサバイバーであることを公表すると、SNSやメールを通じて多くの女子選手からメッセージが届いたそうです。病室からメッセージが届くこともあり、自分の経験に基づくアドバイスやエールを送っています。
「競技者の方には、自分が病院で考えていたことや『1年後の大会をイメージして今できる小さな一歩を重ねていきましょう』を伝えます。1か月後、2か月後、3か月後の目標を立てて、できたら自分を褒める。私は入院中に想いを共有できる人がいなかったので、少しでも寄り添えたらと思います」
そして今年5月からは、体に傷を持つビキニフィットネス女子選手を対象にしたチャリティセミナーを毎月開催しています。参加者は婦人科系の手術や帝王切開で下腹部に傷を持つ女子選手が中心。トレーニング方法やポージングのコツを伝えると同時に、集まった参加費は一般社団法人 国際女性支援協会 ローズ・クルセイダーズを通じて「日本対がん協会ほほえみ基金」に寄付しています。
現在、セミナーはビキニフィットネス選手を対象としていますが、近い将来には一般の女性まで対象を広げる予定です。
「腹直筋を切ると、どうしてもお腹がぽっこりしてしまいます。でも、傷を持った女性でも水着を着たい人はいるはず。体に傷があるからと何かを諦めることはしてほしくないんです」
話す言葉にも力が入ります。そして、もう1つの目標とする40歳以上の選手をメインとした国内イベント開催も、すでに頭の中には具体的な映像が描けているといいます。
日本のフィットネス界は、20代から30代前半の選手をメインターゲットとしていますが、実際は40代以上のマスターズ層の競技人口が圧倒的に多くなっています。そして、全日本や世界選手権の出場を真剣に目指す選手がいる一方で、健康や体型維持などを目的としたライト層も存在します。
「40代でも50代でも60代でもマスターズ選手がメインとなり、それぞれの目的に応じて気軽に参加できるイベントを思い描いています。イベント当日の様子はもう頭に浮かんでいます」