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からだ・美容

ノーベル賞は“遠い世界の話”にあらず 身近な商品に応用されているTRPチャネルとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

ボディ&フェイシャルペーパーの研究にも応用 ついには宇宙進出も!

 温度と化学刺激に対するセンサーの役割を持つTRPチャネル。研究により、熱さだけではなく冷たさに反応するチャネルの存在も確認されました。そこで高石さんは、昔から不思議に思っていたことが解決したといいます。

温度によって反応するTRPチャネルは別。熱さを感じるのは「TRPV1」、冷たさを感じるのは「TRPM8」【画像提供:株式会社マンダム】
温度によって反応するTRPチャネルは別。熱さを感じるのは「TRPV1」、冷たさを感じるのは「TRPM8」【画像提供:株式会社マンダム】

「ミントタブレットを食べた後に水を飲むと一層冷たく感じますよね。これは複数の刺激を与えると感覚が増幅するというTRPチャネルの特徴によるものなんです。冷たいアイスクリームの上にミントの葉が乗っていることも、複数の刺激という同じ理由かもしれません。昔からやっていることには、それなりの理由があったとも考えられます」

 この「複数の刺激を与えると感覚が増幅する」特徴を応用して、マンダムは清涼感を追及した男性用化粧品の開発にも力を入れています。顔や体を拭くとスッとするフェイスシートやボディペーパー類もその一つ。しかし、高石さんはその新商品開発である“失敗”をしてしまったそう。

「成分『メントール』を肌に塗ったり食べたりするとスッとした清涼感が得られるのも、TRPチャネルの反応によるものです。そこで、もっと冷たく感じられるものはないかと考え、さらにTRPチャネルに対して強い刺激がありそうなものを成分として試作品を作ったのですが、体に塗っても何も感じませんでした。使った成分の分子サイズが大きすぎて、皮膚に浸透しなかったのです。刺激を求めすぎてもダメだと思いました(笑)」

 試行錯誤の末、清涼感を与えるユーカリ成分「ユーカリプトール」などを配合したフェイシャルペーパーが誕生しました。不快刺激を低減させつつ清涼感もアップさせるアイテムは、男性用だけでなく女性用も販売され、好評を博しています。

国際宇宙ステーション(ISS)搭載が決定した「ギャツビー スペースシャワーペーパー頭皮用/ボディ用」【画像提供:株式会社マンダム】
国際宇宙ステーション(ISS)搭載が決定した「ギャツビー スペースシャワーペーパー頭皮用/ボディ用」【画像提供:株式会社マンダム】

 そして何と“宇宙進出”も。今年11月には、2022年秋以降からアルコール不使用のボディペーパーが国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されることも決定しました。TRPチャネル研究から生まれた技術を応用し、ISSで使用が厳しく規制されている「エタノール」などの揮発性水溶性成分が使われていないものを開発したそうです。