カルチャー
東京・浅草はなぜ魅力的なのか? ひばり映画や『浅草キッド』に刻まれたその姿とは
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70年代:興行の街、六区が生み出した文化
○『浅草キッド』(2021・ネットフリックスオリジナル)
ビートたけしの自伝的小説「浅草キッド」を劇団ひとりが映画化した『浅草キッド』。伝説のコメディアン“浅草の深見”こと深見千三郎(大泉洋)に弟子入りした青年タケ(柳楽優弥)が、漫才コンビのツービートとして一世を風靡するまでを軸に、タケに大きな影響を与えた深見の人生を併せて描き出す。
舞台となったのは、ストリップ劇場だった頃の「浅草フランス座」。1階に「浅草演芸ホール」があるビルの上階にある。当時は幕間にコントが上演され、ツービート(実際に出演していたのはコンビ結成前)の他にも、八波むと志、渥美清、関敬六、谷幹一、萩本欽一、坂上二郎、東八郎など多くの芸人を輩出した。現在は「浅草フランス座演芸場東洋館」として営業。ストリップは上演されていない。
作中、劇場内部の撮影が行われたのは、長野県上田市の映画館「上田映劇」。外観は合成とセットで創り出しているが、70年代の浅草六区の雰囲気を見事に作り出している。
作中での深見は「浅草フランス座」の経営に行き詰まり、最後の妻であった麻里(鈴木保奈美)が資金を工面する。そこで資金を融通する「タカラ座」社長、田山淳を演じているのは風間杜夫。偶然ではあるが、三十数年後の『異人たちとの夏』の英雄がいるようなタイムトラベル感にも触れられる。そうした感覚をもたらすことができる浅草は、やはり不思議な街だ。
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。