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安定の秘書職から紆余曲折…ヒット作連発の女性監督 独自視線作った個性的すぎる経歴

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

映画の学校で書いたシナリオ 認められて監督に挑戦

 自分自身の道を見つけるため、思い悩みながら時に寄り道をしていた時期。その救いは映画を観ることだったという。

「作り出せない自分の焦る気持ちをなだめてくれたのは、映画館の空間と時間でした。そんな時、今度は“映画美学校”の1期生募集のチラシを見つけたんです(笑)。映画監督になるなんて思いもよりませんでしたが、元々デジタルカメラで映像を撮っていたのと、当時付き合っていた彼氏の後押しもあって。映画美学校では在学中に4人の監督が選出され、卒業制作に計4本の映画を撮るんですが、それを横で見られるだけでも面白そうだと思ったんです」

 そうして学生生活を送った結果、卒業制作を撮る4人の1人に選出される。そのきっかけは、シナリオを書いたことだった。

「ピン芸人の時はあれほど書けなかったのに、登場人物が増やせるとなった途端、筆が走り始めたんです。自分でも不思議でした。そうやって書いたシナリオが卒業制作作品に選ばれ、最高にうれしかったのですが、撮るとなったらまた『私なんかに監督できるのか』と躊躇して……。一晩考えて、こんな機会もうないだろうから全力でやろうと監督したのが『意外と死なない』(1999)です」

 とはいえ脚本はまだしも、イメージを言葉にして、出演者とコミュニケーションを取らなくてはならない演出となると難しいものだ。

「だから主演を自分にしたんです。今もそうですが、怖いからこそ少しでも笑ってほしくて、笑いを大事にしているところはあります。人にきちんと伝えるのは、面倒くさいし、本当に大変なこと。でもちゃんと挑戦してみようと思ったのと、ピン芸人としてやり残したことを燃焼させるつもりでやりました。これで終わりだからと」