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「さやいんげん」と「いんげん豆」の違いはなに? 農家の嫁のおいしい話
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秋の訪れを感じつつある今日このごろ。ちょうど夏野菜との入れ替わりの時期なのかもしれません。「旬の終盤を迎える『さやいんげん』はおいしいですよ」と言うのは、バリキャリ女子だった東京の会社員から“脱サラ”して4年前に茨城の兼業農家に嫁いだ農家の嫁“なっちゃん”こと、こばやしなつみさん。現在、年間40品種の野菜を育てる小さな農業に励むなっちゃんが、この時期においしい「さやいんげん」について2回にわたってお届けします。1回目は、自身の経験と新鮮なものの見分け方について。「さやいんげん」が身近になるかも。
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「旬の終盤」こそ、「さやいんげん」はおいしい!
9月も中盤を過ぎ、夏野菜の収穫最盛期は落ち着いてきましたが、我が家の畑では「さやいんげん」が食べ頃です。「さやいんげん」は、鹿児島や沖縄から北海道まで日本全国で作られていて、周年出回っていることから、お料理の彩りとしていつでも楽しめるのも嬉しい野菜のひとつですね。一方、国産のさやいんげんがスーパーや直売所に多く出回る旬の時期は、初夏から秋にかけてです。お野菜は収穫がスタートする“旬の始まり”の時期に注目があつまりがちですが、実は“旬の終盤”も逃さないで欲しいのです。今この時期の“秋採れ”の「さやいんげん」もまだまだおいしくいただけます。
「さやいんげん」と「いんげん豆」呼び名の違い
「さやいんげん」は、原産地がメキシコ南部から中央アメリカの、マメ科インゲンマメ属の野菜です。採れたての「さやいんげん」は、サヤのさわやかな甘みとポリポリッとした食感が特徴です。脇役のイメージがある野菜ですが、どっさり炒めると、メインのおかずとしても食べ応え十分! 実は魅力あふれる野菜だと私は思います。
ところで、「さやいんげん」と「いんげん」豆の違いって知っていますか? 恥ずかしながら、自分の経験を言うと、気にしたことがなく……。嫁いできた当初、義母に「さやいんげんを収穫するよ」と声をかけられた時「ん? “さやいんげん”は、“いんげん”と違うのか? あれ? “いんげん豆”ってなんだっけ?」などと頭が少々混乱しました。改めて調べてみると、これらは成長過程に応じた呼び名の違いでした。
多種多様な豆の世界 出生魚の「ブリ」みたいなもの?
マメ科の野菜は種類が非常に多いのも特徴です。サヤインゲン属の他にも、ダイズ属(大豆、枝豆など)、エンドウ属(絹さや、グリンピース、エンドウ豆など)、ソラマメ属、ラッカセイ属(落花生)、ササゲ属(緑豆、ササゲ、あずきなど)など細分化するときりがありません。
なるほど、ブリやスズキなどの出生魚みたいなものかと当時自分なりに解釈したのを覚えています。しかし実際はもっと複雑で、普段食べている野菜や加工品の原料となっている豆やその品種を答えるのは結構な“難問”かもしれません。
「さやいんげん」と「いんげん豆」には明確な違いが!
「いんげん豆」の語源は、1654年に隠元禅師(いんげんぜんし)が中国からいんげん豆を持参したのが最初という説からのようです。一方、いんげん豆を豆としてではなく、豆が完熟する手前の未成熟である若いサヤのうちに「さやいんげん」として食べ始めたのは、ヨーロッパからといわれているようです。中国やタイなどのアジアに小旅行に行った際も、屋台料理に「さやいんげん」が添えられていた記憶があります。世界でも広く親しまれている野菜のひとつとも言えますね。
〇さやいんげん
いんげん豆が未成熟のうちである若い“サヤ”を指す。炒めたり、茹でたりして食べる。
〇いんげん豆
さやいんげんが成熟した中身の“豆”の部分(成熟種子)を指す。煮豆や甘納豆、和菓子の白あんなどに使われる。大福豆、うずら豆、金時豆、とら豆、手亡(てぼう)など、品種も多く、調理法によって使い分けられている。
※いんげんは、おそらく「さやいんげん」の略称として広い意味合いで使われている言葉。
新鮮な「さやいんげん」を見分ける3つのポイント
「さやいんげん」は収穫から時間が経つにつれて、わかりやすいくらい味が落ちます。美味しいものを見極めるポイントは“鮮度”の良し悪しです。ちなみに、スッと鉛筆のように伸びる「さやいんげん」はカッコイイですが、若干腰が曲がっていても味に大差ありません。
新鮮なさやいんげんを見分けるポイント
- サヤ全体がピンと張って、肌にハリがあるもの表面がしなびていると収穫から時間が経過している証拠です
- サヤが鮮やかな緑色のもの黄色っぽくなっていると味も風味も落ちます
- サヤの中の豆の形が表面に大きく浮き出してきていないもの表面に中の豆の凹凸が目立つ場合、成熟が進んでいてサヤの皮や中身がやや硬い傾向にあります
旬の終盤を迎えた「さやいんげん」 食卓に取り入れてみて
サヤ全体の形が、丸いものや平たいものなど、国産の「さやいんげん」の中にも様々な品種があります。収穫時期や地域に合った品種が育てられているので、旅先の道の駅やスーパーに寄って見つけた時などに買って、自宅でサッと調理して食べてみるというのもツウな楽しみ方ですよ。次回は、保存方法や、我が家の2歳の息子もヤミツキの「さやいんげん」のおいしい食べ方を紹介します。
農家の嫁直伝 今、楽しみたい“秋採れ”「さやいんげん」の簡単おかずレシピ
(こばやし なつみ)
こばやし なつみ
半農半フリーランスPRプランナー。2009年に大学卒業後、東京のPR会社に就職。PRプランナーとして勤務後、14年に独立。同年、茨城県・水戸の兼業農家へ嫁ぐ。16年9月に茨城県立農業大学校いばらき営農塾(野菜入門コース)を修了、同11月に第1子を出産。現在は少量多品種(年間約30~40種)の野菜を義両親と共に作り、販売する傍ら、平日は執筆、意識調査の設計・分析等の仕事もこなしている。