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【私の家族】「もう犬は飼わない」 16年連れ添った先代犬の旅立ちでペットロスに 銅版画家・山本容子さんと保護犬の運命的な出会い
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ペットロスを乗り越え保護犬を迎える

それ以来、何年もペットロスが続き「もう犬は飼わない」と決めていた山本さんですが、その気持ちを変えたのは1匹の保護犬との出会いでした。
「足が悪く盲導犬になれない子がいると聞き、会いにいったところ、私を見るなり飛んできて私の膝に乗ったんです。この子だ! と即、連れて帰りました」
こうして、山本さんに迎えられたラブラドールレトリーバーのルカ。ほかのきょうだい4匹は盲導犬試験に合格して、訓練に参加中でした。しかし、ルカは関節炎で両足の爪が浮いており、うまく歩けないため、盲導犬候補からはずされていたのです。
足の治療を試みたり靴を作ってもらったり、いろいろと試したものの、結局治らないまま、今年8歳になります。コンクリートや砂利道は足が浮いてしまい痛くて嫌がりますが、アトリエの芝生の庭なら元気に歩くことができるそうです。そんなルカの特技は、椅子に座り、テーブルに“手”をつくことなく食事をすること。
「自分の椅子に座り、テーブルに自分のお皿を置いて、人間と一緒にみんなで食事をしています。なじみのレストランにもお弁当を持って連れていきます。自分で選んだ椅子に座って、キャベツ、ニンジン、ピーマンなどシャキシャキした野菜を、音を立てておいしそうに噛むんですよね」
子どもの頃から一緒に暮らした犬はかけがえのない存在
ルーカスもルカも、山本さんの作品によく登場します。銅版画で描いた旅の絵本「わたしの時間旅行」では、和紙で385枚、すべてのページのどこかにルーカスがいます。「犬は神様」は、幼い頃からそばにいた犬たちと、ルーカスが亡くなるまでの思い出が描かれたエッセイ集です。ルカは、2022年に出版された俳句集「山猫画句帖」のカバーを飾っています。
「温かさが欲しいとき、版画の中のどこかにいると、ほっこりするんですよね」
子どもの頃から、犬がいる生活を送ってきた山本さんにとって、犬はかけがえのない存在。とくに大人になってから一緒に暮らしたルーカス、そしてルカは特別な存在なのでしょう。
(Miki D’Angelo Yamashita)

Miki D’Angelo Yamashita
コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。外信部、ニューヨーク支局、パリ支局、文化部、書籍編集部、週刊誌にて、国際情勢、文化一般を取材執筆。