仕事・人生
肌の弱い娘の仕草からひらめいた 専業主婦がスキンケアブランドを立ち上げるまで
公開日: / 更新日:
キュウリエキス入りリップで起業したい…しかし夫も親も猛反対
ヒロさんのチャレンジ精神は、生まれ育った環境も影響していた。父親は建築会社を営み、母方も曽祖父の代から商売をしていた。とくに、ヒロさんが短大卒業後、身の回りの世話をしていた祖母は、早く亡くなった医師の夫(ヒロさんの祖父)が遺した病院を継いで経営を行ったり、紳士服販売の事業を営んだりするなど、昭和一桁生まれの女性には珍しいバリバリの実業家だった。祖母は孫のヒロさんに事業の面白い経験談などをよく語って聞かせてくれ、「なんでもチャレンジだよ!」といつも励ましてくれていた。
「祖母はやさしくて、『なんで私は稼ぎもなく、何もできないんだろう!』『この先、私はどうやって生きていくんだろう』って、どん底気分を味わっていた私に、『焦らないで、ゆっくり何をやりたいか考えたらええよ』とか『ヒロちゃんは大器晩成なんよ』と信じてくれていました。10年前、81歳で亡くなりましたが、生きていたら『私、ちゃんとやりましたよ』って報告したいですね」
しかし、ヒロさんがキュウリエキス入りリップを考案していたとき、すでに祖母は他界していた。社会経験が足りないヒロさんの起業に、夫をはじめ、両親も姉も猛反対。味方はいなかった。ヒロさんがチラリと話を振っただけでも、「どうするの?」「無理でしょ」と、“心が折れる言葉”が返ってくるばかり。夫はメーカーが無償で協力していることも怪しんでいた。
「主人は『そんなうまい話はないだろう』って。たしかに、一昨年の12月に思い通りのリップが完成するまで、メーカーさんには一度も会ったことがなかったので、商品が完成した暁には連絡が取れなくなるんじゃないかとか、相談する相手がいなかったぶんネガティヴ思考になっていました。結局、そのメーカーさんはとてもいい方で、今でも何かあるとすぐに相談して、アドバイスをいただいています。私はめちゃくちゃ人に恵まれていたと思います。事業を始めるうえでは、家族がむしろ一番の敵でしたね(笑)」
夫の信二さんの反対の姿勢が軟化したのは、ヒロさんがサンプルを作ってもらって、ああでもない、こうでもない、と試行錯誤するようになってから。頭の中で夢物語を描いているのではなく、実際に行動に移しているヒロさんを見て、妻の本気度を感じたのだ。
信二さんはリップが完成する半年ほど前の18年6月、公認会計士として独立。信二さんは自身が起ち上げた会社にヒロさんの事業を取り込むかたちで、ヒロさんの事業を助けるようになった。
「ずっと主人の手は借りない、と思って相談もしていなかったんですけど、リップができあがって、メーカーさんと初めて顔を合わせ製品化の契約をしようとしたときには、夫に助けてもらいました。やっぱり心強かったですね」