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仕事・人生

「もう帯を口で噛んで結ばなくてもいいんだ」 生まれつき右手がない妻のため夫が相談すると…老舗旅館の粋な計らいに3.8万“いいね”

公開日:  /  更新日:

著者:古川 諭香

老舗旅館「加賀屋」が用意してくれた“片手で着脱できる浴衣”

マジックテープが取り付けられた浴衣の帯【写真提供:りんりんさん(rinrin.left)】
マジックテープが取り付けられた浴衣の帯【写真提供:りんりんさん(rinrin.left)】

 それからしばらくして、宿泊の約1週間前のこと。加賀屋から、りんりんさんのウエストサイズを確認する電話が入りました。

 もしかしたら、片手で着脱できる浴衣を用意してくれたのかもしれない――そんな期待を寄せながら迎えた旅行当日。部屋には、りんりんさん専用の“片手で着られる浴衣”が用意されていました。

「浴衣を見た瞬間、言葉が出ませんでした。これまでずっと抱えていた悩みから一気に解放されたような気持ちになりました」

 浴衣にはマジックテープが縫い付けられており、片手で着脱できる仕組み。帯もマジックテープですが、浴衣らしい結び目がちゃんと現れるように工夫されていました。浴衣に袖を通したとき、ひとりで着替えられることに感動し、「もう帯を口で噛んで結ばなくてもいいんだ」と胸がいっぱいになったといいます。

 さらに、旅館の心遣いはそれだけではありませんでした。お礼を伝えると、「こちらは古い浴衣を手直ししたものですので、お土産にお持ち帰りください」と、その浴衣をプレゼントしてくれたのです。夫妻が気兼ねしないよう配慮した、さりげないひと言でした。

帯の結び目。簡単に浴衣に差せるよう、裏側が工夫されていた【写真提供:りんりんさん(rinrin.left)】
帯の結び目。簡単に浴衣に差せるよう、裏側が工夫されていた【写真提供:りんりんさん(rinrin.left)】

 プレゼントされた浴衣はりんりんさんにとって、大切な宝物になりました。「この浴衣なら、ひとりで楽に着替えられる。でも、旅行のたびに使ってボロボロになってしまったらどうしよう……」。そんなうれしい葛藤を抱くようになりました。

 その後、りんりんさん夫妻は毎年、加賀屋へ宿泊するように。やがて、浴衣を作ってくれた人とも対面し、直接お礼を伝えることができました。