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漫画

今さら聞けない「鬼滅の刃」 “全集中”で世間に追い付く基礎知識 ポイントは難読漢字?

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

王道展開を彩る「それぞれの泣かせる人生」

 鬼滅の作者は吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さん。「いきなり読めない!」との声も聞こえてきそうですが、残念ながらこれは最初の一歩でもありません。鬼滅を攻略する最大のポイントは、難読漢字といってもいいでしょう。

 その理由は、舞台が大正時代の日本であり、さらに敵が「鬼」という人外の存在だから。ただし、物語の基本設定と構造はストレートかつ明快です。

 
【基本設定と物語】
・主人公:竈門炭治郎(かまど・たんじろう)
・主人公の敵:鬼(元は人間)
・流れ:家族を鬼に殺され、生き残った妹・禰豆子(ねずこ、※「禰」はしめすへんが正式表記)も鬼になってしまった炭治郎。妹を人間に戻す方法を探すため鬼を追うことを決意し、剣術の修行を受けた後、一般人を鬼から守る「鬼殺隊」(きさつたい)に入隊。禰豆子が入った箱を背負いながら、個性豊かな仲間や先輩剣士と出会う。

 
 家族を助けるために敵との戦いを選択する流れは、少年ものの王道です。しかし、それだけでヒットするものでしょうか? アンケートで「最大の魅力」を尋ねたところ、王道展開にプラスされた“ある要素”によって、魅力がグンとアップしたことが分かります。

 
「敵キャラでも感動シーンがあること」(13歳・女性)
「各キャラの回想シーンがしっかりと描かれていることだと思います。そのキャラの過去を知ることで“戦う理由”が分かる」(31歳・男性)
「鬼にも背景があって感情移入できる」(25歳・女性)
「みんな一人ひとりに物語があって、見れば見るほど共感したり感情が湧く」(29歳・女性)
「兄弟の絆、仲間との絆、鬼自身も鬼になる前にさまざまな絆を経験しているところ」(48歳・男性)
「キャラ個人個人に特有の背景がありいろいろなパターンで感情移入がしやすいこと」(40代・男性)

 
 どうやら、敵味方を問わずキャラクターを掘り下げる部分に定評があるご様子。鬼殺隊と鬼、周辺の人々で軽く数十人は登場する大所帯ですが、ほぼ全員について各自の過去が言及され、鬼殺隊に入隊した理由や鬼になった理由などが明確に提示されます。

 特筆すべきは、この過去から発生した行動動機に「私欲」がほぼ介在しないこと。全員が何らかの“理不尽な状況”に影響を受けて、現在の道を選択しています。炭治郎たち「鬼殺隊」はもちろん、極悪非道な鬼たちにしても敗北の際にかつての“理不尽な状況”を思い返し、元の純朴さを取り戻して消えていくのです。

 炭治郎が紡ぐ大きな物語の中に散りばめられた、「人間交差点」的な泣かせるエピソード。これがキャラの数だけ存在していれば、どれかが鑑賞者の心に刺さる確率は当然上昇します。そして、それらをまとめ、時に大きな影響を与える炭治郎のキャラはまっすぐで前向きであり、基本思考は“性善説”です。「生まれながらの悪はいない」という価値観に基づいているからこそ、敵味方の人生は最後に報われ、鑑賞者に大きなカタルシスをもたらします。

鬼滅のディテールを味わうポイントは難読漢字?

 もちろん、鬼滅のディテールはキャラの掘り下げだけではありません。先に述べた基本構造はともすれば説教臭くなりがちですが、それを防ぐディテールも存在します。その1つが、炭治郎が剣士として成長する過程です。

 鬼殺隊には多くの剣士が所属しており、彼らは10階級に分かれています。階級の名称は上位から「甲(きのえ)」「乙(きのと)」「丙(ひのえ)」「丁(ひのと)」「戊(つちのえ)」「己(つちのと)」「庚(かのえ)」、「辛(かのと)」「壬(みずのえ)」「癸(みずのと)」です。

「これなら読める!」とお思いでしょうが、残念ながらやはりここも序の口。最上級「甲」の上には、さらに「柱(はしら)」と呼ばれる最強の9人が存在します。AKB式でいうなら「神9」です。

 
水柱(みずばしら):冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)
蟲柱(むしばしら):胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)
炎柱(えんばしら):煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)※「煉」は「火」に「東」が正式表記
恋柱(こいばしら):甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)
岩柱(いわばしら):悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)
霞柱(かすみばしら):時透無一郎(ときとう・むいちろう)
蛇柱(へびばしら):伊黒小芭内(いぐろ・おばない)
風柱(かぜばしら):不死川実弥(しなずがわ・さねみ)
音柱(おとばしら):宇髄天元(うずい・てんげん)

 
 この時点で「漢字検定か!」とツッコみたくもなりますが、炭治郎の同期剣士をはじめその周辺も難読漢字の嵐が吹き荒れています。アニメから入ったファンが多い理由は、音声なら難読漢字に挑む必要がないからかも?

 
竈門禰豆子(かまど・ねずこ):炭治郎の妹で鬼になってしまう
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):炭治郎と同期の剣士
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):同上
不死川玄弥(しなずがわ・げんや):同上
栗花落カナヲ(つゆり・かなを):同上
産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや):「鬼殺隊」の第97代当主
鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ):元「水柱」で炭治郎の師匠

 
 また、柱の9人についている「○柱」の○の部分は、各人が使う「呼吸」の名称です。呼吸とは各人が習得する特殊な呼吸法で、ここから「型」と呼ばれる剣術を繰り出します。柱はこの呼吸法を極めた結果、最強となったわけです。また型にも1つずつ名称があり、もちろん大半が難読漢字であることは言うまでもありません。

 とはいえ、何らかのテクニックを習得して強さやランクを上げていく過程、そのディテールはやはり、「ドラゴンボール」の必殺技や「キャプテン翼」の必殺シュートなどなどに続く少年ものの王道です。「鬼滅はあくまでも少年漫画である!」と主張する部分でもあるため、説教臭さ100%にならないバランサーの役割を果たしているともいえるでしょう。