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世界文化遺産登録で注目される“新しい北海道” 「縄文遺跡群」の魅力に迫る

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・西村 綾乃

道内で見学できる遺跡 その魅力は

史跡「北黄金貝塚」。内浦湾に面した大規模な貝塚を伴う集落跡【写真提供:JOMON ARCHIVES】
史跡「北黄金貝塚」。内浦湾に面した大規模な貝塚を伴う集落跡【写真提供:JOMON ARCHIVES】

 北海道・北東北の縄文遺跡群は、1万年以上にわたり採集・漁労・狩猟によって定住した人々の生活と精神文化を伝える文化遺産で、農耕文化以前の人類の生活や精神文化を伝える貴重な遺産でもあります。

 今年7月27日のユネスコ世界遺産委員会では、この遺跡群が「先史時代における農耕を伴わない定住社会及び複雑な精神文化を示していること」「定住社会の発展段階やさまざまな環境変化への適応を示していること」などが評価され、世界文化遺産への登録が決まりました。

 道内には17の遺跡で構成される「北海道・北東北の縄文遺跡群」のうち、6つが点在しています。それぞれの魅力を児玉さんに説明してもらいました。

史跡「垣ノ島遺跡」(函館市)

史跡「垣ノ島遺跡」【写真提供:JOMON ARCHIVES(函館市教育委員会所蔵)】
史跡「垣ノ島遺跡」【写真提供:JOMON ARCHIVES(函館市教育委員会所蔵)】

「太平洋を望む段丘上に立地する紀元前5000年頃の集落跡。竪穴建物による居住域、大型の合葬墓と単独墓からなる墓域が形成され、日常と非日常の空間が分離したことを示しています。竪穴建物からは漁網用の石錘が出土し、漁労が活発に行われていたことを伝えています。墓には、この地域に特徴的な幼児の足形を押し付けた粘土版が副葬されることがあり、当時の葬制や精神性を示しています。その後、紀元前2000年頃になると、長さ190メートルを超える盛土遺構が造られました。盛土からは土砂とともに土器や石器などが大量に出土し、祭祀・儀礼が継続して行われたことを示しています」

○ガイダンス施設「函館市縄文文化交流センター」:道内唯一の国宝「中空土偶」を常設展示。

史跡「北黄金貝塚」(伊達市)

史跡「北黄金貝塚」【写真提供:JOMON ARCHIVES】
史跡「北黄金貝塚」【写真提供:JOMON ARCHIVES】

「内浦湾を望む丘陵上に立地する貝塚を伴う集落跡。台地上に居住域と墓域、貝塚が配置され、低地に湧水点と水場遺構があります。貝塚からは、貝殻や魚骨、動物の骨や角で作られた骨角器などが出土し、海進・海退などの気候変動に適応しながら漁労を中心とした生業が行われていたことを示しています。貝塚は祭祀場的な性格も有しており、貝塚の中から人の墓や動物儀礼の痕跡が確認されています。また、低地にある水場遺構からは意図的に壊された石皿やすり石などの石器が大量に出土し、廃棄に伴う祭祀が行われていたと考えられています」

○ガイダンス施設「北黄金貝塚情報センター」:北黄金貝塚での生活や祭祀・儀礼を伝える土器や石器などを展示。大量に出土したすり石、クジラ骨製の祭祀具が注目ポイント。