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東京・浅草はなぜ魅力的なのか? ひばり映画や『浅草キッド』に刻まれたその姿とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

スカートの裾をひるがえしお嬢さんが焦がれる場所

 少し前の日本を知るなら、ロケーション撮影された映画を観るのが一番。格好の動体資料である映画には、飾らない庶民の生活まで活写されている。特に興行街であった浅草は映画の舞台になることが多かった分、映画からさまざまな街の横顔を見ることができる場所。そんな浅草の歴史を感じることができる映画4本をご紹介しよう。

○50年代:『お嬢さん社長』(1953)

 川島雄三監督が16歳の美空ひばり主演で撮った音楽ドラマ。製菓会社の御曹司だった父と駆け落ちした母。2人ともすでにこの世になく、体調を崩した祖父の代わりに社長代理を引き受けたマドカ(美空ひばり)が、会社の乗っ取りを企む社員の陰謀や自分の夢に立ち向かっていく。

 隅田川を行く水上バスの上でスカートをはためかせ、マドカが浅草、吾妻橋の船発着所を目指す。このキュートな一カットだけで、マドカがその地に行くのをどんなに楽しみにしているのかが分かる。彼女の向かう先は「K劇場」こと「浅草国際劇場」。

浅草国際劇場【写真提供:関口裕子】
浅草国際劇場【写真提供:関口裕子】

「浅草国際劇場」は1937年、松竹歌劇団(SKD)のホームグラウンドとして開業。当時は最高水準のデザインを施された劇場だった。マドカがここに向かうのは歌劇スターを夢見ていたからだが、実は亡くなった彼女の母親も元歌劇スターだった。

吾妻橋の水上バス発着所【写真:関口裕子】
吾妻橋の水上バス発着所【写真:関口裕子】

 映画はセットとロケーションをつないで構成される。吾妻橋の水上バス発着所や浅草国際劇場前はロケーションだが、マドカが仲良くなる劇場の舞台監督の秋山(佐田啓二)や菊子(小園容子)が住む浅草裏のお稲荷横丁はセット。セットゆえにどの神社とは特定できないが、浅草神社境内にある「被官稲荷神社」がよく似た作りだ。

美空ひばりが歌を披露したお稲荷さんに似ている被官稲荷神社【写真:関口裕子】
美空ひばりが歌を披露したお稲荷さんに似ている被官稲荷神社【写真:関口裕子】

 踊りながら祈願すると願いが叶うという設定。映画の後半で「コンコン」と言いながら踊りながら祈る小園と美空がかわいらしく、アイドル映画の側面もある。