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王室主要メンバーから「引退」させられたアンドリュー王子 スキャンダルが英国に与えたインパクト【後編】
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エリザベス女王チャールズ皇太子森昌利ロイヤルファミリーアンドリュー王子
ふたりの娘の父アンドリュー王子 被害者の子ども達へ憐れみもなく保身のみ
さらに批判されることになったポイントとしては、結局アンドリュー王子が自分の保身しか考えずにこのインタビューを行ったことが明らかになった発言に対するものだった。それはインタビューの締めくくりにメイトリス記者が「それでは最後に何か言い残したこと、言いたいことはありますか?」と尋ねた時の発言だった。
「いや、ありません。私の言いたいことはあなたの質問で全て引き出されてしまったので」
この発言の何が問題なのか。それはこの場面がエプスタイン被告の被害者に同情を示す最大のチャンスだったからだ。メイトリス記者は明らかにアンドリュー王子に謝罪の機会を与えていた。
この場面を見た視聴者は誰もが、アンドリュー王子がエプスタイン被告の卑劣な犯罪の被害者になった少女達に対し、何の憐れみも同情もないという印象を抱いた。しかも王子にはふたりの娘がいることもあり、アンドリュー王子への非難は感情的な怒りを帯びたものに増幅された。
こうなってしまっては、さすがに一番かわいい息子と言えど、エリザベス女王もアンドリュー王子を王室から追い払うしか方策がなくなってしまった。世界的には現代で最も華のある王室として認識されている英国王室ではあるが、今も少なからず英国に色濃く残る不平等な階級社会のシンボルとして捉える見方もあり、本国の中にはその不要論も根強い。だからこうした最悪の類のスキャンダルを放置すれば、そんな王室反対派を援護することにもなる。
そんな状況で昨年12月2日にはバージニア・ジュフリーさん自身が、BBCのドキュメンタリー番組『パノラマ』に出演した。終始おどおどとして、落ち着きがなかった女王の次男と比べて、今では35歳になったジュフリーさんは真っ直ぐにカメラを見つめ「私達ふたりのうちひとりが真実を話している。そしてそれが私だということを私は知っている」と断言して、アンドリュー王子の疑惑を深めた。
このように、2019年は英王室にとって激動の一年となった。そして年が明けて2020年1月早々、ヘンリー王子とメーガン妃の王室引退宣言でさらに揺れるロイヤルファミリー。この騒動でやや影を潜めた印象だが、アンドリュー王子の疑念も未だ晴れず、昨年の激動は年が変わっても全く落ち着く様子を見せない。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)